PlayStation5に採用された液体金属の大きなチャレンジ

  1. Sony公式が出したPS5分解動画の衝撃

Sonyのゲーム事業を担っている子会社であるSIE(Sony Interactive Entertainment)公式が出したPS5(PlayStation5)の分解動画が最近話題を集めています。

www.youtube.com


公式分解動画
<https://www.youtube.com/watch?v=iLKvWhcA_KU>

 

公式が出した分解動画ということもあり、その信憑性もさることながら説明もわかりやすく楽しく鑑賞することができました。


PS3(PlayStation3)を友達経由で格安で譲ってもらい分解した経験がある私からすると、公式が分解して解説してくれると時間節約できますし、自分では気づかない点も補足してくれるため非常にありがたいですね。

楽しみながら観ていたのですが、唯一この動画を見ていて気になった点がありました。

それが、CPU(Central Processing Unit)とヒートシンクを繋ぐ材料に液体金属を使っている点でした。

パソコンやゲーム機の分解組み立てをやったことがある方は、この動画で最も気になる点ではないでしょうか。

 

今回はそんな液体金属の凄さを説明した後に、液体金属を採用するためにSonyが出した特許をゆる~く考察していきたいと思います。

 

  1. PS5に採用された液体金属とその背景

パソコン、ゲーム機やスマートフォンといった電子機器はCPUと呼ばれる部品を必ず搭載しています。

 

CPUは人間に例えると脳に当たる部品で、電子機器の各部品に指示を出す役目を担っています。

最近のCPUはスマートフォンやゲーム機が数十年前には考えられなかったくらい高性能になっていることもあり、その頭脳たるCPUも高性能なものが使用されています。

さて、CPUが高性能になると立ちはだかる大きな問題は何でしょうか。

もちろん様々な問題はあるのですが、最も有名で設計者が頭を悩ませるのが「熱」です。

このCPUという部品、電気を与えて動作させるとすごい熱を出すんですね。


なぜ熱を出すのかということは、CPUの中にあるMOSFETと呼ばれる半導体素子のSi基板が高抵抗なため~、とかなんとか複雑な説明があるためここではカットします。


通常のCPUはその熱を逃がすためにヒートシンクと呼ばれる剣山のようなヒートシンクとヒートスペレッタと呼ばれる金属物を取り付けて、CPUに溜まった熱を逃がします(図1)。

 

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図1. CPUに溜まった熱を取り出す構造
<https://www.pc-koubou.jp/magazine/2225>

CPUの上にヒートスプレッタとヒートシンクを積み上げるわけですが、ヒートスプレッタとヒートシンクの間には隙間が出来やすく熱がヒートシンクまで伝わるのを阻害してしまいます。

そこで登場するのがグリスと呼ばれるものです。

グリスは熱を伝えやすい有機材料で、ヒートシンクとヒートスプレッタの空気の隙間をうまく埋めてくれるため、熱を逃がしやすくしてくれます。

グリスで有名な材料といえば、シリコーンが最も有名な材料ではないでしょうか。

しかし、既に説明した通りCPUは昨今性能が向上してきており、昔よりも熱を大量に出すようになっています。

大量の熱を逃がすためには、より高性能なヒートシンクが必要になりますが、高性能なヒートシンクはサイズが大きくなる問題がトレードオフで発生します。

CPUを高性能化しないといけない…でも熱をうまく逃がすためにヒートシンクを大きくすると、家庭で使用するちょうど良いサイズにならない…というジレンマに陥るわけです。

そこで登場するのが、有機材料グリスから液体金属グリスへの転換です。

 

液体金属はこれまで使われていた有機材料グリスよりも熱伝導率が5~10倍高いものなので、ヒートシンクを大きくすることなく熱を逃がしやすくすることができます。
参考文献: <https://sakidori.co/article/491109>

まぁそれでもPS5の筐体は大きいですが(笑

3. 液体金属を採用するために講じた対策と特許

しかし、これまで使っていた有機材料グリスから液体金属に切り替えると新たな問題が発生します。

調べてみたところ、液体金属は以下の2つが大きな問題となるようです。

 

  1.  液体金属が漏れ出すとAl(アルミニウム)を腐食する
  2.  液体金属は電気を流すため、漏れ出すと電子部品のショートを引き起こす


どちらも液体金属が漏れ出すことによって引き起こされる問題であるため、液体金属を採用した場合、どうやって漏れ出さない構造にするのかが重要となります。

そこでSonyはPS5を発売するために、液体金属が漏れ出さないようにする構造を実現して特許として権利化していますので、ここで紹介したいと思います(図2)。


この特許は日本語で書かれていて誰でも無料ダウンロードできますので、興味のある方はご参考までに読んでみてください。
<https://patentscope2.wipo.int/search/ja/detail.jsf?docId=WO2020162417&tab=FULLTEXT>

 

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図2. PS5に液体金属を採用するために出された特許

 

中央に鎮座しているCPUと、剣山状になっているヒートシンクの間にあるのが液体金属です。

CPUの脇にある材料がシール部材と呼ばれるもので、液体金属を外に漏らさないためにこのシール部材が封止する役目を担っているわけです。

シール部材がどんな材料なのか気になり特許を読んでみたところ、ちゃんと特許に書かれていました(図3)。

 

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図3. シール部材の材料


どうやらある程度弾力のある材料のようです。

 

この特許を読む前の疑問として、PS5のCPUに液体金属を採用して何が特許として認められる点だったのか、というところでした。

 

特許として認められるためには、既にある特許に対してどこが新しい技術なのか(進歩性と新規性)を明確化し、どういった点がこれまで一般に知られていない技術なのか(公知性)を明確に書く必要があるのです。

この”一般に知られていない”という点が結構難しいのです。

 

今回の液体金属に関して言うと、液体金属を使用するだけでは特許とならないと考えられます。

というのも、液体金属を有機グリスの代わりにCPUとヒートシンクの間に入れれば放熱しやすいというのは、マニアには知られた技術(公知性がある技術)だからです。

※液体金属を使用した特許もおそらく既にあるため、その点からも公知性がないと思われます。

 

ですので、

液体金属を使用 + 液体金属が漏れ出さない構図を構築

の2つが合わさって、ようやく特許となっていると思われます。

そして、この特許を読んでいてもう一つ気になったことが、CPUとヒートシンクの間にこれまで挟まっていたヒートスプレッタがなくなっている点です。


もしかすると有機材料グリスではできなかったヒートスプレッタを取り除いて簡単な構造にすることも、液体金属に変更することで同時に実現できた可能性があるのではないでしょうか。

 

この点も進歩性や新規性があると判断された点かもしれません。

 

  1. まとめ

PS5の分解動画を見てから興味半分で特許まで読んでみましたが、なかなか面白い技術が世の中に出回るようになってきていますね。


しかし、製造業に携わっている身からすると、この液体金属使用はかなりハードルが高いと瞬間的に思う技術ですね。

直感的に「漏れ出すとやばい!!!」と誰でもわかりますから、液体金属を採用しようとすると多くの人たちから反対意見を受けることが容易に想像できるからです。


一度成功例が出れば、他社も「既に製品になっているからうちの会社でもできる!!!」と思う人が出始めて、急速に広がっていくわけですが。

その他にも、年間何百万台も出荷される製品にこれまでになかった技術を導入しようとすると、歩留まり問題など多くの課題が山積することにもなりますから、その点でも難しいでしょう。

その第一歩にチャレンジして液体金属採用に至ったSony社員の技術者の方々に拍手です。

「頭が固いから博士は使えない」はなぜ発生するのか

優秀な研究者でも正社員として就職できない、という記事を最近読みました。

www.nikkei.com

 

正直、この手の博士課程卒業者がうまく就職できない現状は、様々な記事で既に論じられていることではあります。

大学院を修士2年、博士3年もかけて修了(卒業)して世間的にようやく「博士」と呼ばれるようになったにも関わらず定職に就けないのは悲しいという他ありません。

かくいう私も博士課程を修了していて博士と呼ばれる人種です。

しかし、よく教授を困らせ怒らせ転がり落ちるように留年して、それでも続けた末に何とか博士となった大変に手のかかる学生(当時29歳)でした。

その私が運よく企業の研究職で職を得ているのは、奇跡としか言いようがないのではないでしょうか。

そんな私目線で、この手の博士となった若者(アラサー)のつらい就職状況について、なぜこの問題が発生しているのかお話をさせてください。

まず、博士が就職難に陥る原因として良くあげられるのは次のようなものです。

1. 博士を増やす政府方針で、博士課程進学者は急増したが博士号取得者の就職先となる大学教員のポスト増加は行われなかったため、ポスト不足に陥っている。
2. 博士は専門性が高い故、一部の専門性の高い業種にしか就職が難しい。
3. 日本の経営者にうまく博士を使えるだけの能力がない。
4. 日本企業は若い人を欲しがり、社内で教育すればよいと考えている。
5. 頭が固いから博士は使えない。

どれも一理ある話なのではないかと思います。

しかし、博士として就職した私からすると最も大きな原因となっているのは5だと思うのです。

正直なところ(私が言うのも変な話ですが)たしかに博士は頭が固いと感じるところは多いのです(そうではない方すみません)。

これは実体験でもありますが、例えば他人が言っていることをそのまま鵜呑みにできず、大勢の集まる打ち合わせの場で相手の指示の疑問点や間違いを本人に"その場で”確認してしまうことがよく起こります。

しかもその聞き方もよくないため、相手の機嫌を損ねます(というより損ねました)。

博士の育った大学の研究室という狭い空間では、相手の主張をその場で完全否定したり、自分の主張を完全否定されることも珍しくなく、むしろ教育として必要とさえ思われている節があります。

相手からすれば、面倒な指導をわざわざ丁寧にしているのに疑問に思われることや反論されることは面白くなく、イメージはすこぶる悪い上、素直ではないという印象を与えてしまいます。

言い方は悪いですが「素直ではない=頭が固くて使えない」と思われてしまうのです。

企業はコンプライアンス上問題となる発言や過激な反論は難しいため、物事をオブラートに包んで反論したり「私はこの意見には反対ですよ~」と暗に言っている発言をするという、博士の人からすると想像もできなかった文化の違いがあります。

要は大学の研究室と企業の文化の違いだと思うのです。

更に、企業が重宝する人材と大学が輩出する博士人材のミスマッチも博士は使えないというイメージを植え付ける一端になっていると思うのです。

博士というのは、博士論文という書物の成果を認められて得られるいわゆる"資格の一種"です。

この博士論文というものは、これまで見つかっていなかった現象・理論やこれまでになかった素晴らしい性能を持つものを生み出した人に与えられる資格なのです。

つまるところ「私はこんな新しいものを作りました」という証明書です。

しかし、企業で働こうとすると、学生時代には経験したこともないほどの人数のグループで働くことになります。

そこには社員同士の意見調整や何か月単位のスケジュール管理を複数のプロジェクトで同時並列で走らせる必要が出てきます。

博士となるために磨いてきた新しいもの作り出す能力よりも、調整や管理の能力が重要となるのです。

ここにミスマッチがあり、意見調整やスケジュール管理能力を磨いていない博士はつまずき「博士は使えない」というレッテルを貼られてしまいます。

そして博士の不運はこれだけに留まりません。

先日、私の愛するBooks&Appsというビジネスマン向け記事を扱うサイトに、こんな記事が載っていました。

blog.tinect.jp


東大に入ったことで能力を過度に期待されて辛い人生を送っている人たちの記事です。

この問題の根っこは、博士は使えないという話と同じだと思うのです。

博士なのにその程度のこともできないのか、という先入観を持ってしまう人が一定数いるんですね。

先ほど言ったように、博士という資格は企業が求める意見調整やスケジュール管理能力を保証してくれる万能な資格ではないんですよ。

博士になった私も言っていて悲しくなってきます........。

以上が、私が企業に転がり込んで仕事をしていて感じたことや、周りの博士研究者が実際に言っていたことをまとめた全てです。

はてさて、博士のイメージ回復はいつになるのか…..とほほ。

MRAM積層イメージセンサは実現するのか考察

  1. MRAMの普及

MRAMの研究開発が佳境を迎えています。

 

TSMC, GF, Intelから組み込みMRAM(eMRAM)の量産を発表している状態で、次はDRAMを代替する可能性があります。

まだ容量不足感が否めないですが、技術進歩とともに容量増加していき代替が進んでいくでしょう。

URL: https://news.mynavi.jp/article/20190311-786944/

 

MRAMの普及時期に関して、MRAM研究の権威、東北大学遠藤先生の日経エレクトロニクス記事(2020年6月号)のコメントが面白かったため引用してみます。

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 MRAMに限らず、新技術の実用化には手順を踏む必要がある。まず、エンジニアリングサンプルで特定ユーザーに、信頼性や実装技術などを評価してもらってから正式に受注を受け、量産ラインで製造するまでおよそ3~4年掛かる。かつてのDRAMやNANDフラッシュもそうだった。

 MRAMの場合、サンプル出荷から3~4年後といえばちょうど2021年秋から2022年にかけてになる。

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大規模なMRAM普及はもう目前まで来ている状態で、DRAMだけにとどまらずSRAMも代替する可能性があります(図1)。

 

さて、この記事を読んでいて疑問に思ったのは、MRAMの大規模普及にともなってMRAMを積層したデバイスがどれくらいで世に普及するようになるのか、という点です。

 

具体的にはイメージセンサにMRAMが積層したMRAM積層イメージセンサがいつ頃世に普及するようになるのかが気になりましたので、考察していきたいと思います

 

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図1. MRAMの普及予想

URL: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00059/00001/?P=3

 

  1. MRAMはイメージセンサ業界にやってくるのか

実はすでにLogic, DRAM, CIS(CMOS Image Sensor)を3層積層したイメージセンサは製品化してますので、MRAM積層の間に挟まっているDRAMをMRAMに置き換えることで実現可能だと思われます(図2)。

 

チップ間を接合する際に必要となる温度にMRAMが耐えきれるのかは、現時点で若干疑問はありますが。

 

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図2. DRAMを積層した3層積層型イメージセンサ

URL: https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201702/17-013/

 

DRAMをMRAMで代替するモチベーションとしては、消費電力の低減でしょう。

 

DRAMは一定時間経つとデータが消えてしまう揮発性メモリに対して、MRAMは半永久にデータが消えない不揮発性メモリであるため、DRAMに必要なデータのリフレッシュが必要なくなるため、消費電力を削減できます。

 

ただし、MRAMのタイプの内、STT-MRAMは書き込み時間と電力に通常の5倍以上必要であることはウィークポイントです。

 

しかし、数十nsの書き込み時間であればイメージセンサ駆動に必要なスピードとしては必要十分で、かつリフレッシュによる消費電力の大幅低減もあることから、積層してみたいという方向に行くように思われます。

 

MRAMが量産されるのが2021~2022年と予想されることから、2023年頃からイメージセンサ搭載の研究開発が開始されるのではないでしょうか。

 

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図3. SRAM, DRAM, MRAMの各パラメータ比較
URL: https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2015/10/70_10pdf/f02.pdf

 

  1. 余談 ~MRAMの新方式~

STT-MRAMの書き込み時間が長いことが問題として取り上げましたが、実はこれ解決する見込みが立っています。

 

最近登場した方式でSOT-MRAMという新方式のMRAMで解決できる可能性があります(図4)。

 

この方式ではスピン軌道トルク(Spin-Oribit Torque: SOT)誘起磁化反転を書き込みに用いることで高速化を図っています。

 

しかし、このSOT方式、発見者の東北大学の深見俊輔先生も“SOTの物理的起源は現時点でも十分には理解されない”と述べており、もしイメージセンサに積層されるようになるには、SOT-MRAMの研究開発+MRAM積層イメージセンサの研究開発が必要です。

URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/86/7/86_565/_article/-char/ja/

 

この方式が取り入れられたら、MRAM積層イメージセンサの量産は10年以上後になるでしょう。

 

それにしても、MRAMはどの方式が主流になるのか今後の行方が気になって仕方がありません。

 

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図4. STT-MRAMとSOT-MRAMの比較
URL: https://eetimes.jp/ee/articles/1912/11/news037.html

大企業が衰退するメカニズム

1. 大企業を苦しめるイノベーションのジレンマ

大企業に入社すれば将来安泰と呼ばれた神話が崩れつつある現代においても、まだまだ根強い人気を持っている大企業。

 

今回は大企業が衰退してしまうメカニズムである新製品を作る際の障害となるイノベーションのジレンマに関して、半導体業界を例に取って話したいと思います。

 

イノベーションのジレンマて何?と思う人がいるので簡単に説明しますと、大企業が新製品を生み出そうとする(イノベーション)と陥る会社組織の欠陥(ジレンマ)のことです。

 

このジレンマがあるため大企業が衰退して事業から撤退したり事業を譲渡したりしてしまいます。

 

2. 製品性能を向上させていく2種類の技術

新製品を生み出そうとする際には、その製品の売りを作るために、技術者達はこれまでの製品の悪かった点やもっと良くなる点を改善して、以前発売した製品を超えるものを作り出していきます。

 

この改善する技術を持続的技術(持続的イノベーション)と呼びます。

 

持続的技術によって生み出された製品Aは、大企業が成熟した市場を入念なマーケティングをして市場規模や顧客調査をすることで、どれぐらいの売り上げを得ることができるか知ることができるので、安心して市場参入していきます。

一方、これまで想像もできなかったような新技術を導入することで、持続的技術によって成長してきた製品Aを一新してしまう技術を破壊的技術(破壊的イノベーション)と呼びます。

 

破壊的技術によって生み出された製品Bは、性能向上が十分ではなく市場に出回っている製品Aよりも明らかに性能が劣っているため、製品Aと同じ市場で発売できず、新しい市場で発売しようとします。

 

しかし、新しい市場はマーケティングをして市場規模や顧客調査をして将来性を知ることが困難であることが多く、大企業の社内で話をしても関連部署全体の理解を得ることができず市場参入しません。

 

そうこうしているうちに、製品Bは持続的技術の恩恵を受けてどんどん性能を向上させていき、いつしか製品Aを超えた性能を製品Bが持つようになります。

 

その頃にようやく大企業は製品Bの開発を認め製品開発がスタートしますが、時すでに遅く、先行する企業から周回遅れで開発をすることになってしまい、繁栄していた大企業は年月が経つにつれて衰退していきます。

 

この大企業特有の市場見積もりができないことによる製品Bの開発の遅れと衰退をイノベーションのジレンマと呼びます。

 

この現象に関して、半導体業界で起こった製品を例に次で説明していきます。

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図1. 持続的技術と破壊的技術による性能向上

 

イノベーションのジレンマに関して、もっと詳しく知りたい人はクレイトン・クリステンセン著者の有名な本がありますので、ぜひ読んでみてください。
URL: https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88-Harvard-business-school-ebook/dp/B009ILGWS6/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&crid=1MDLU35PQ5M9A&dchild=1&keywords=%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E&qid=1590211154&sprefix=%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%2Caps%2C261&sr=8-1

 

3. HDDからSSDの新時代へ

半導体業界でイノベーションのジレンマが起きた製品というのは、HDD(製品A)とSSD(製品B)のことです(図2)。

 

HDDとSSDの中身を見てみるとわかりますが、製品の中身ががらりと変わっていることがわかります。

 

HDDは磁気ディスクが回り、磁気ヘッドがそのデータを読み取る構造を持っていますが、SSDにはそういったメカニカルに動く部品が全く存在せず、黒く四角いもの(フラッシュメモリ)がいくつも並んでいるだけです。

 

これが破壊的技術の恩恵を受けた効果です。

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図2. HDDとSSDの中身


SSDが誕生した当初は、当然HDDに勝てるような容量(性能)は持っていなかったわけです。

 

当時でも、デジタルカメラに搭載できるレベルの数MBの容量しかなかったのに対して、HDDが80MBでした。

 

当然PC市場に必要とされる性能を満たしていませんし、容量的に非常に劣っています。

しかし、SSDはHDDにはない落下の衝撃に強い、動作が速い、小型にしやすい利点を持っています。

そして、持続的技術によって年々SSDの容量は向上していき、近年ではPC市場でも問題なく使えるレベルまで成長しています。

 

こうなってくると、容量は同じだけど落下の衝撃に強い、動作が速い、小型にしやすい特徴を持っているSSDの方が良いという人がいくらでも現れ始めます。

 

HDDは持続的技術によって容量を向上させてきていますが、破壊的技術によって生み出されたSSDによってどんどん市場を奪われてきています(図3)。

 

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図3. HDDとSSDの市場と出荷数の推移

 

4. 大企業の衰退

この段階になると大企業がSSD事業に乗り出しても、既に先行した企業から周回遅れ状態になっており、時がたつにつれて大企業が衰退していくわけです。


破壊的技術による市場変化に対応できなかった企業は非常に多く、衰退してしまった事業の大幅縮小や撤退などで被害を最小限に抑えようとしました。

 

私の知る限り、HDD事業からSSD事業に切り替えることができたのはサムスン東芝、ウエスタンデジタルくらいでしょうか。

他のHDDを製造していたIBM富士通NECなどの多くの会社はSSDという破壊的技術によって居場所がなくなってしまったのです。

 

恐ろしいことは、イノベーションのジレンマ半導体業界だけでなくどの業界でも起こり得る現象であり、No. 1企業だった大企業がいつ何時窮地に立たされてもおかしくないことです。


今大企業に在籍している人は、大企業に在籍していて将来安泰と思っていると、いつの間にか破壊的技術によって台頭してきた企業によって自分の会社の業績が悪くなり、会社がつぶれたり部署ごとリストラされたりする可能性があることを知っておいてほしいのです。

イメージセンサ業界が更なる長波長検出カメラの開発に着手するか考察  

 

  1. 長波長側のイメージセンサ開発激化

近年、SWIR(短波赤外線)からNIR(近赤外線)を検出するイメージセンサの開発が激化していると感じています。

 

Panasonic

有機光電変換膜を使用したNIRイメージセンサの開発

URL: https://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/02/jn170209-1/jn170209-1.html

 

Sony

Si表面をピラミッド形状にすることで近赤外線の量子効率向上

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/mag/15/320925/120800189/

 

InGaAsによるSWIRイメージセンサの開発

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/03429/

 

静岡大学

NIRを使用した太陽光低ノイズToFイメージセンサ

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00654/00010/

 

用途としては、監視カメラ、スマホ顔認証やToF(Time of Flight)センサの精度向上など多岐にわたるわけですが、昔のダイナミックレンジ拡大の流れがひと段落して、可視光域以外に着手し始めた印象です。

 

赤外線にはいくつか種類があって、今回の開発は

 

NIR(近赤外線): 波長780nm~1.0µm or SWIR(短波赤外線): 波長1.0~3.0µm←開発激化

MIR(中赤外線): 波長2.5~4.0µm

FIR(遠赤外線): 4µm~1mm

 

のように、NIRとSWIRが中心となっています。

※そういえば前々から気になっていたのですが、波長帯が文献によって結構大きく異なるのはなぜなのでしょうか。
今回の議論とは無縁なので考察しませんが….若干引っかかります。

 

一方、これより長波長を検出するFIRイメージセンサの開発している企業もあるわけですが、個人的に興味を持ったのは、長波長側に開発がシフトしてきたイメージセンサ業界が、このままFIRまで開発主戦場がシフトしていくのかということです。

◆京セラ

FIRを使用した自動運転車向けカメラ開発

URL: https://www.kyocera.co.jp/ceatec/images/pdf/2019_04_Kyocera_FIRcamera.pdf

 

今回はこの点を考察していきたいと思います。

 

  1. FIRイメージセンサ業界の全容

まず、FIRイメージセンサの応用分野ですが、車載、セキュリティや医療など多岐にわたっています。

 

特に自動運転車の夜間走行を補助するFIRカメラ向けとなると、最近ホットな話題なのではないでしょうか(図1)。

 

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図1. FIRイメージセンサを使用したナイトビジョンシステム

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/ne/18/00028/00008/

 

現行のミリ波レーダを使用した夜間走行補助システムは、解像度が下がってしまう課題があるため、夜間走行補助システムとしてFIRイメージセンサ開発は今後激化していっても不思議ではありません。

 

FIRイメージセンサの市場規模の伸びを見ても2019年から2025年で急成長することが予想されています(図2)。

 

このことからも将来性のある市場であり、新規企業の参入がありうると思われます。

 

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図2. (非冷却式)FIRイメージセンサの市場成長

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/280896/022400004/

 

では、可視光イメージセンサを作っている企業は、既にFIRイメージセンサの市場に参入しているのかというと、どうやらそうではありません。

 

可視光イメージセンサを主戦場としている企業とFIRイメージセンサを主戦場としている企業を列挙してみます。

 

◆可視光イメージセンサ

日本: Cannon

日本: Sony

韓国: サムスン電子

アメリカ: OmniVision

アメリカ: ON Semiconductor

 

◆FIRイメージセンサ

アメリカ: FLIR Systems

フランス: ULIS

アメリカ: DRS Technology

 

上記は代表的な企業をピックアップしていますが、可視光イメージセンサとFIRイメージセンサを両方製造している企業が一社くらいあってもいいものですが、それが無く完全な住み分けがなされていることが特徴的です。

  

この背景には、FIRイメージセンサを製造する技術が可視光イメージセンサを製造する技術と大きく異なることが理由として考えられます。

 

  1. FIRイメージセンサ業界の参入障壁

FIRイメージセンサの大きく分けると冷却型と非冷却型に分けられます(図3)。

 

◆冷却型

検知技術: 光電変換

材料: HgCdTe, AlGaAs

読み出し機構: CMOS回路

構造: 光電変換材料とCMOS回路の積層

冷却機構: -200℃レベルの冷却

 

◆非冷却型

検知技術: 温度変化

材料: Poly-Si, 酸化バナジウム

読み出し機構: CMOS回路

構造: MEMS構造とCMOS回路の積層

冷却機構: なし

 

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図3. 冷却型と非冷却型の違い

URL: https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/ne/18/00028/00001/?P=6

 

それぞれ長所短所があるわけですが、冷却型は何といっても最大の課題は冷却機構の小型化でしょう。

 

10µm程度のFIRを光電変換するためには、0.1eVバンドギャップの半導体材料を使用することになり、室温で電子が励起されてしまうため、これを防ぐために冷却機構で大幅にイメージセンサを冷却する必要があるからです。

 

これに加えて、可視光イメージセンサで使用されるSi材料から別材料の光電変換材料の開発が必要になります。

 

しかし、冷却型の性能は非冷却型と比較して優れているという利点が、FLIR Systemsから提示されています。

URL: https://prod.flir.jp/discover/rd-science/cooled-or-uncooled/

 

一方、非冷却型は、断熱性を担保するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造を作り込む技術が何といってもネックです。

 

そしてSi材料以外の材料開発も必要となります。

 

しかし、冷却機構を必要としないため、低コストかつ小型化しやすい利点があります。

 

以上のことから、冷却型では冷却機構の小型化と材料開発がネックとなり、非冷却型ではMEMS構造と材料開発がネックとなることがわかります。

 

この問題があるために可視光イメージセンサ業界の企業がFIRイメージセンサ業界に容易に参入できないと思われます。

 

  1. FIRイメージセンサ開発に着手するのか否か

ここまでSWIRやNIRイメージセンサと異なり、材料開発以外の大きな問題点があるため、参入障壁が高く容易にFIRイメージセンサ業界に参入できないという流れで予想しました。

 

しかし「では、全く参入できないのか」というと、「入り込む余地はある」というのが今回記事をまとめていたときに思った感想です。

 

企業の買収という方法を取ればもちろん参入することはできますが、それ以外の方法としても、冷却機構開発は従来品を使用して民生用ではなく産業用FIRイメージセンサとして開発に着手する可能性もあるように感じているからです。

 

もう一つのネックとなる材料開発ですが、すでにInGaAsウェハをCMOS回路ウェハに積層する技術があるわけですから、AlGaAsウェハをCMOS回路ウェハに積層すれば、それほど大きな材料開発をせずに開発ができる気がしています。

 

もちろんp型とn型のAlGaAsを作れればの話ですが。作れますかね....? 

このあたりの技術ができるのか否かは別の考察が必要ですので、今回は深堀して議論はしません。

 

とりあえず、非民生品用FIRイメージセンサの開発着手なら有り得るのではないか!?

というのが、今回考察を進めていった結論です。

 

今後イメージセンサ業界はどんな方向に発展していくのか、楽しみです。

有機イメージセンサはCMOSイメージセンサを代替できるのか考察

 

最近イメージセンサ業界がにわかに活気立っていると思っております。

 

というのも最近Panasonicから有機イメージセンサを搭載した有機カメラを2019年に商品化するプレスリリースを発表したからです。

 

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URL: https://news.panasonic.com/press/jp/data/2018/10/jn181026-1/jn181026-1.html

 

これまでのカメラはSiで光電変換を行っています。

これが有機膜で光電変換を行うようになります。

これ、カメラユーザは興味をそそられないしあまり関係ないと取られる変化かもしれませんが、イメージセンサを扱う業界としては大きな変化なんですよ。

 

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URL: https://news.panasonic.com/press/jp/data/2018/10/jn181026-1/jn181026-1.html

 

有機イメージセンサの立ち位置としては、これまでのイメージセンサの歴史を書くと

 

CCD⇒(表面照射型)CMOSイメージセンサ⇒(裏面照射型)CMOSイメージセンサ有機イメージセンサ

 

と置き換わる可能性があるわけです。

 

Si光電変換から有機膜光電変換に切り替わるには、SiのCMOSイメージセンサをそのまま改良しただけではどうやってもたどり着けません。

 

業界地図を刷新してSiのCMOSイメージセンサを代替してしまう可能性を秘めた技術となるかもしれません。

 

こういった技術を破壊的技術と呼ぶのですが、ご興味あればクレイトン・クリステンセン著者のイノベーションのジレンマを読んでみてください。

URL: https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E-%E5%A2%97%E8%A3%9C%E6%94%B9%E8%A8%82%E7%89%88-Harvard-business-school-ebook/dp/B009ILGWS6

 

この有機イメージセンサが業界を刷新するポテンシャルを持っているか否かを考察してみたいと思います。

 

まずは、有機イメージセンサのスペックをISSCCの予稿から頂戴して、スマートフォン・一眼レフ・監視カメラ・FA・車載・ドローンの中からどの用途に適したカメラなのかを考察。

有機カメラは「放送と映像制作の幅広い用途に対応」と書かれていますし、イメージプロセッシングユニットを用意していることや、チップサイズ14.97×10.27mm、画素サイズ3×3umということから、その通りの用途でしょうから特に業務用途の考察はしません。

URL:

2013年VLSI: https://ieeexplore.ieee.org/document/6576670

2016年ISSCC: https://ieeexplore.ieee.org/document/7417931

2018年ISSCC: https://ieeexplore.ieee.org/abstract/document/8126258

 

チップサイズ14.97×10.27mm、画素サイズ6×6umということから小型なイメージセンサが必要なスマートフォン・ドローンはなさそうです。

 

性能としてダイナミックレンジが123.8dB、フレームレートが60fpsを実現していることを強調していることから、明暗のわかれる環境下での使用を想定していて、なおかつ高速で移動する物体を撮影するのでしょう。

 

そうすると一眼レフ・車載・監視あたりでしょうか。

しかし、車載は動作環境の温度が高く、過酷な環境で問題なく動くことを保証する必要がありますから、高温耐性が低めの有機材料を使用する有機イメージセンサは不利そうです。

 

また、ランダムノイズが5e-と若干高めであることから、高画質が必要となる一眼レフに適用するにはランダムノイズ低減が必要になりそうです。

 

ですので、現時点では一眼レフや車載よりも監視が用途として適している印象です。

 

次は、これら用途のイメージセンサを代替する性能があるのかを考察していきたいと思います。

 

まずは現行の製品との比較

有機イメージセンサ

素数: 1920×1080画素

DR: 123.8dB

フレームレート: 60fps

ピクセルサイズ: 6×6um2(用途によっては3×3um2)

 

■監視イメージセンサ

素数: 3096×2196画素

DR: ?

フレームレート: 30fps(ADC 12bit), 60fps(ADC 10bit)
ピクセルサイズ: ?⇒ユニットセルサイズ: 1.62×1.62um2

URL: https://www.sony-semicon.co.jp/products_ja/new_pro/october_2016/imx326lqc_j.html

 

ふと疑問に思った余談ですが、

8Kの有機カメラの画素数は7680×4320⇒約3200万画素

 

一方、ISSCCで発表されている有機イメージセンサは1920×1080⇒約200万画素

 

で16倍の画素数の差が発生しています。

ISSCCで発表された有機イメージセンサをそのままプレスリリースの有機カメラに搭載したものかと勝手に思っていましたが、違うかもしれませんね。

 

余談はここまでにして……

掲載されているスペックとして、画素数以外は特に劣っている点はなさそうです。

素数の増加は単純に微細化していけば良いので、画素サイズ1um程度までは問題なく増加できそうです。

 

しかし、論文にしか掲載されていない有機イメージセンサのノイズですが、これは間違いなく現行の監視用イメージセンサよりも劣っているでしょう。

 

現状で5e-以上のランダムノイズとリセットノイズですから、有機イメージセンサは画質が悪いと言われることは当分の間免れません。

 

しかしまぁ、CMOSイメージセンサが登場したときもCCDと比較して原理上画質が悪くてCCDを超えることはないと散々言われてきていましたが、結局技術の進歩によってCMOSイメージセンサのノイズも1e-を切るレベルに到達しているわけです。

同じようにノイズは有機イメージセンサの技術が成熟するころには問題となっていない気がします。

 

最期にコスト面の話をしようかと思います。

 

正直コスト面は有機イメージセンサの圧勝かと個人的に思っています。

 

理由は簡単で、処理回路上に蒸着法で画素となる有機膜を比較的少ない工程数で積層できるため、工程数が少ない分コストを抑えられるからです。

富士フィルム有機イメージセンサURL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/photogrst1964/71/2/71_2_75/_pdf

蒸着法の特許: https://astamuse.com/ja/published/JP/No/2013072122

 

現在主流の積層型の裏面照射型イメージセンサは画素回路と処理回路を別々に作ってから積層するため、どうしても工程数が多くなります。

 

また、画素回路作製に必要だったイオン注入がなくなることも工程数を減らすことのできる利点だと思います。

 

そんなわけで、最後にまとめますと

 

有機イメージセンサ

スペック: △

理由: ノイズ以外問題なし。ノイズもイメージセンさの歴史的に見て10年後改善する可能性あり

 

適応市場: ○

理由: 可視光から近赤外まで検出可能であるため、多くの市場に出荷できる

 

製造コスト: ○

理由: 処理回路に画素薄膜を積層するため工程数を削減できる

 

というわけで、代替するポテンシャルは十分持っていると思います。

監視カメラに関しては比較的すぐに代替が始まり、その他の用途は10~15年後にくるのではないかと思っております。

歩留まりと性能ばらつきがわかればもう少し考察したかったのですが、さすがに無理ですね。

 

それにしても、有機イメージセンサに必要となる有機光電変換膜は材料開発の分野なので、半導体屋さんとは違った人材が必要でしょうから、パナソニック富士フィルムの2社が組んで有機イメージセンサを完成させたのは上手な研究開発ですよね。